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書籍

#78 書籍の部屋#5 「ベネズエラ 溶解する民主主義、破綻する経済」 

「ベネズエラ 溶解する民主主義、破綻する経済」 (著・坂口安紀 中公選書)

 

世界で最も石油埋蔵量が多いベネズエラ、ならば国民たちはさぞ、豊かな生活を送っていることでしょう・・・

 

しかし、ベネズエラはそんなイメ-ジをことごとく裏切っていきました。

 

過去5年、経済成長率はマイナス15%以下、インフレ率はなんと10万%を超えてしまったのです。市民たちは自国通貨での取り引きを諦め、アメリカドルや仮想通貨、物々交換で取り引きするようになりました。殺人や誘拐が横行しても警察が機能せず、人々は自衛のために銃を買うようになってしまったのです。

 

こうした状況に耐えかねて難民として出国することを選んだ人々は、2020年までに国民の6人に1人にのぼります。

 

そんな状況でも、ベネズエラから学ぶべきことは多いのです。外資収入の95%を石油に頼る国は、国際石油価格の下落に大きな影響を受けました。しかし、すべての産油国が同じように悲惨な状況に陥ったわけではないのです。

 

ベネズエラ自体、1970年代ころまでは豊かな石油収入にあやかった、中南米で最も豊かな国のひとつだったのです。

 

本書は、日本屈指のベネズエラ研究者が一般向けに書き下ろしたものです。そして、ベネズエラの「なぜ?」に迫ろうとします。その鍵を握るのが、1999年に始まるチャベス政権とそれを引き継いだマドゥロ政権にあります。

 

特にチャベスについては、革命的英雄と独裁者という相対立する評価があるのですが、本書は豊富なデ-タや関係者へのインタビュ-などを基にして、その「なぜ?」に対して丁寧に答えていきます。

 

チャベスは、国民が主人公の参加民主主義という壮大な理想を掲げて、石油の恩恵に浴してこなかった人々に食品、医療、住宅などを提供しました。しかし、石油収入を打ち出の小づちにしようとする急進的な試みにしだいに反発が強まっていき、ク-デタ-未遂事件が起きると、軍や警察を取り込んで、裁判所の中立性をないがしろにして、積極的に政敵を排除していくようになったのです。

 

本書は、ベネズエラの過去の20年の経験から、制度やルールをねじ曲げて異論を排除する政治手法の問題を鋭く指摘していきます。

 

そして、これはベネズエラに限らない教訓だと思い知らされるのです・・・

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