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映画

香港の「デモ映画」が、各国で次々と「映画賞」を受賞し始めた!

2021年10月13日、山形国際ドキュメンタリー映画祭で香港のドキュメンタリー作品『理大囲城』(Inside the Red Brick Wall / トレーラーはこちら)がコンペティション部門最高の「ロバート&フランシス・フラハティ賞」を受賞しました。

 

この作品は2021年1月、香港の映画評論家たちが作る団体「香港電影評論学会」(「電影」は「映画」の意味)が昨年度の映画大賞の最優秀賞に選んだことで一挙に注目されました。

 

そして、話題となった背景にはいくつかの理由があったのです。

 

まず、かつて「東洋のハリウッド」という異名を取り、商業作品が雲集するこの賞で、27年目にして初めてドキュメンタリー作品が年度最優秀作品に選ばれたことにあります。

 

次に同作品は同賞受賞まで市内のアートセンターで数回上映されただけで、ほとんどの市民が観ていないどころかその存在も知らなかったことです。さらに人々が最も関心を寄せたのは、「このご時世」に「この作品」が「わざわざ選ばれた」ということそのものだったのです。

 

「このご時世」というのはもちろん、2020年6月末に香港国家安全維持法(以下、国家安全法)施行以降の香港を指します。メディアのオーナーや著名活動家の逮捕はもとより、同大賞発表の直前には昨年の議員選挙に立候補しようとした民主派政治家と支持者たちが50人余りも「国家政権転覆共謀」容疑で逮捕されていました。市民がそんなニュースに意気消沈していたその時、2019年デモで最大の山場となった事件を描いた作品に大賞が贈られたのですから・・・。

 

『理大囲城』は、香港理工大学のキャンパスに逃げ込んだ後13日間の籠城を強いられたデモ隊と偶然大学に居合わせた市民の姿を、学内からネットを使って中継した複数の記録者による映像をまとめたものです。その画面はうす暗く、また登場する人物のほぼ9割以上がマスクをつけたままです。

 

また籠城に至るまでの事実関係が説明されておらず、一般日本人観客にどこまで受け入れられるのか不安材料はありましたが、山形での受賞は大変うれしいニュースとなったのです👍

 

舞台となった香港理工大学は、中国と香港を結ぶ鉄道の香港側終点駅にあたる九龍半島ホンハム駅に隣接し、香港人なら誰しもがその側を通ったことがあるランドマークです。

 

また、駅との間には九龍半島と香港島を結ぶ最も古いトンネルの入口があります。デモ隊はあの日、この大動脈であるトンネルの入口にレンガを並べて通行不能にし、経済に打撃を与えようとしていました。それを阻止しようとした警察と衝突、放たれた催涙弾や放水車に押される形で、デモ隊は同大学キャンパスに逃げ込んだのでした。

 

映画は、2019年11月17日にデモ隊や偶然学内に居合わせた人たちがキャンパスの出入り口を封じられ、籠城を余儀なくされたところから始まります。その後13日間、香港市民は仕事を終えるとまっすぐに家路を急ぎ、自宅のテレビやパソコンで現場からの生映像を見守りました。

 

それはまるで、古いたとえでいうなら、かつてのあさま山荘事件に似ています。ただし、あさま山荘事件と大きく違うのは、理工大学は市民にとっての日常の一部であって、また閉じ込められたデモ参加者たちの安否を多くの人たちが気遣っていたことにあります。

 

同作品では、封鎖突破か投降か、はたまた外からの応援を待つのか・・・と、さまざまな可能性の間で揺れる人たちの様子が捉えられています。途中ティーンエージャーたちを助け出そうと乗り込んできた高校の校長グループや議員ら以外、その姿もよくわかりません。さらに、製作関係者の名前すら一切伏せられているという点からもこの作品が直面する深刻な現実が伝わってくるようです。

 

事件は最終的に1800人もの関係者が逮捕されて終息しました。その後もさまざまな抗議活動は散発したものの、2020年には新型コロナ感染の大爆発によってデモ活動は休止状態に入りました。

 

しかし、同事件は2019年に吹き荒れた大規模デモの嵐の象徴的な記憶として、いまだに市民一人ひとりにあのときの焦燥感や不安とともに刻まれています。以前は誰もが自由に出入りできていた各大学キャンパスには事件後ゲートが設けられ、学内関係者以外の出入りが制限されるようになりました。それは開放的だった空間がどんどん閉じられていってしまう、そんな香港社会を象徴するような出来事にもなりました。

 

なぜ、香港映画評論学会はここで市民の傷口をまたかきむしるようなこの作品を大賞に選んだのでしょうか?

 

同学会メンバーとして作品評定に加わった方は、それを「プロとして、この作品を選ばないわけにはいかなかった。もしここで逃げれば、今後ずっと後悔の念にさいなまれることになるだろうから」と語っています。香港市民もまたプロたちのそんなメッセージを見抜き、言葉にはできない思いを共有したのかもしれません。

 

その証拠に、同学会が組織した受賞記念上映会には鑑賞希望者が殺到し、サーバーはパンクしたのです。窓口売りチケットを求めて会場には発売前夜から長蛇の列ができました。

 

しかし、同作品を見たいという市民たちの熱意に対して、親中派が「暴徒礼賛映画の上映は取り締まるべき」と叫び出します。そして、受賞記念上映会は圧力を受けて中止となり、その後予告されていたアートセンターでの上映も中止が宣言されたのです。

 

同時に政府は、これまでエロや過剰な暴力シーンによる観客年齢を定めた映画ランク制度(電影分級制度)に、新たに国家安全法に依拠した「上映禁止」判断を導入し、香港で上映される映画はすべてこの新たな検閲制度を受けることになったのです。こうして、かつては「なんでもあり」の「東洋のハリウッド」香港で『理大囲城』が上映される可能性はほぼ消えてしまったのです・・・。

 

そこに2021年10月初め、台湾から香港映画界を鼓舞するようなニュースが舞い込んだのです。「中華圏のアカデミー賞」と呼ばれ、アジアで最も権威のある映画賞の一つ「台湾金馬奨」で、香港デモ関連作品がなんと一挙に3作品もノミネートされたのです。

 

うち1本は、2021年6月のカンヌ映画祭で会期直前にカンヌでの上映が決まり、上映までずっと情報が伏せられていたといういわくつきのドキュメンタリー作品『時代革命』(Revolution of Our Times )。最優秀ドキュメンタリー作品にノミネートされています。

 

同作品が焦点を当てたのは、「前線」と呼ばれ、デモ隊の先頭に立って直接警察と対峙する若者たちです。理工大学の籠城の様子も含まれ、その他デモ関係者に直接インタビューした映像なども含まれているといいます。周冠威監督はカンヌの上映で脚光を浴びた後香港に戻り、香港での映画製作を続ける意欲を見せています。

 

しかし、8月に口コミで知り合いを集めて行われた、デモとは無関係の別作品の上映会が集会禁止令の取り締まりに遭うなど、すでにその動きに当局が厳しい監視の目を光らせていることが明らかになっています。

 

2本目は最優秀ショートムービー候補の『良夜不能留』(The Night / トレーラーはこちら)です。台湾の著名映画監督、蔡明亮氏がデモの真っ最中の香港に自ら乗り込み、夜の街を撮影した作品。遠景では一見何事もない、静かな繁華街の夜の風景ながら、カメラが近づくとあちこちに抗議活動の痕跡を見て取ることができます。激しいデモ活動にばかりカメラが向けられがちだった当時の香港で、市民が目にしていた日常的な光景が収められています。

 

そして3本目は、香港デモを背景にした劇映画(フィクション)で、自殺を試みる、見知らぬ少女を探し求める若者たちを描いた『少年』(May You Stay Forever Young)。最優秀新進監督賞と最優秀編集賞の二つにノミネートされています。

 

監督とプロデューサーを務めたのはまだ知られていない若い3人組。当初ノミネートを伝える香港メディアはこの『少年』が香港映画だと気づいていません。その後、主催者が公開したトレイラーの最後に「香港では上映できません・・・」と書かれていることがわかり、一挙に注目を集めました。3人は「周冠威監督を慕っている。カネになる映画よりも正直に映画を作っていきたい」とメディアインタビューに答えています。

 

それにしても、なぜ台湾でここに来て3本も一挙に香港デモ作品がノミネートされたのでしょうか?

 

香港を手中に収めた中国がこのところ、台湾にたびたびちょっかいを出していることはすでにニュースで流れているとおりです。すでに中国の手に落ちてしまった香港の次は台湾、そんな緊張感を映画祭関係者も意識しているのでしょうか?

 

タイミング的に香港からデモをテーマにした作品がどっと映画祭に流れ込んできているのかもしれない、という推測もありました。つまり、金馬奨にノミネートされた作品はその氷山の一角だと。ただし、映画祭の文化人関係者が香港の事態を意識している可能性もまったく無視できないと言う人もいました。

 

一方で、すでに台湾へ移住した香港人ジャーナリストが偶然袖振りあった台湾の若い大学生に、「台湾の民主化についての講義があるんだが聴講しないか」と声をかけられたと、自身のYouTubeチャンネルのコラムコーナーで語っていました。その大学生の申し出があまりに突然過ぎて、当のジャーナリスト氏は一瞬返事に詰まったといいます。つまり、社会的な話題ではないにせよ、「香港」と聞くとすぐに自分たちの民主化運動を連想する台湾人も確実にいるということでもあります。

 

そんな台湾金馬奨の審査結果が発表されるのは2021年11月27日です。すでにそれを語り継ぐことができなくなった香港の代わりに、新たなデモの記憶を歴史に刻んでいくことになるのでしょうか・・・

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