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世界

クーデター・ドミノ 危機に無策だった「独裁者」の末路

アフリカでは経済停滞や感染症の拡大、食糧危機を背景に、クーデターが各地で発生しています。

 

「高齢の大統領は休めばいい・・・」

 

西アフリカのギニアで2021年9月5日、クーデターが発生し、アルファ・コンデ大統領が軍に拘束されたのです。クーデターを率いたママディ・ドムボヤ大佐はかつてフランス外人部隊にも所属した歴戦の軍人ですが、憲法の停止を宣言したうえで、新憲法のもとで新たな政権を発足させることを提案しています。

 

2021年2月のミャンマーのケースでそうだったように、一般的にクーデターというと「民主主義の敵」「文民統治の危機」などネガティブなトーンで語られやすいです。実際、国連だけでなくアメリカなど欧米諸国はクーデターを批判していて、周辺国もギニアの「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)」加盟資格停止といった制裁を科すなど、反対の姿勢をみせています。

 

おまけに、ミャンマー軍事政権を黙認する中国政府までギニアのクーデターを批判しているのが目を引きます。

 

しかし、ギニア国内の反応はおよそ海外とは正反対なのです😱クーデター部隊と大統領支持派の部隊との間で小さな衝突が発生したものの、大きな混乱はほとんどありません。また、クーデターに反対する声もありますが、目立った抗議デモも発生していないのです。

 

むしろ、権力を握ったドムボヤ大佐は群衆の歓声に迎えられて議会議事堂に入ったほどです。ある女性はドイツメディアの取材に「とっても幸せ!彼(大統領)は休めばいい」と皮肉を込めて語り、83歳と高齢であるコンデの退場を喜んだのです。

 

ギニアの例は特別なものではありません。西アフリカでは2020年以来、まるでドミノ倒しのようにクーデターが相次いでいるからです。

 

これはもう、ク-デタ-・ドミノ・・・😢

 

マリでは2020年8月、クーデターでケイタ大統領ら要人が拘束されました。その後、周辺国の調停で暫定政権が発足しましたが、クーデターを率いたゴイタ大佐が2021年6月、大統領に就任しました。

 

さらに、近隣のニジェールでも2021年3月末、大統領官邸が軍の一部に襲撃されました。ただし、2期目の就任式を目前に控えていたバズム大統領は無事で、政権転覆は未遂に終わったのです。

 

そして、2021年4月にはチャドで、1991年からこの国を支配してきた「独裁者」デビー大統領の死去にともない、デビーの息子マハマ・デビーが軍の支持で、議会の承認を経ないままに大統領に就任しました。野党はこれを「憲法を無視した事実上のクーデター」と呼んでいます。

ギニアの事例は、アフリカで2020年から4番目のクーデターなのです。

 

このようにアフリカではクーデターが連鎖していますが、国によって事情はそれぞれ異なります。ギニアに限っていえば、少なくとも国内でクーデターに好意的な声が目立つのが大きな特徴です。

 

なぜ、多くのギニア国民はクーデターを支持するのでしょうか?

 

そこには国民生活を覆う不安や危機を打開することへの期待があるからです。

ギニアの2020年のGDP成長率は、アフリカ開発銀行によると5.2%でした。一昨年の5.6%からわずかに下がりましたが、コロナ禍に直面した世界にあっては、むしろ例外的に高い水準といえます。

 

ただし、それはほとんどの国民には無縁の好景気だったのです。景気を支えたのは、輸出額の約半分を占めるボーキサイトでした。ボーキサイトはアルミニウムの原料で、その世界最大の輸出国がギニアなのです。

 

ところで、現代の資源採掘は高度に機械化されていて、あまり雇用を生みません。また、汚職の蔓延するアフリカでは、政府と海外企業の癒着によって利益が流出することも珍しくありません。

 

実際、ボーキサイト生産がいくら好調でも、ギニア国民の約55%は貧困層のままです。好景気にともなう物価上昇は、多くの国民にとって、ただ生活苦が増える以外の意味をもたないのです😢

 

そして、これに拍車をかけたのが、感染症の拡大です。2020年以来、コロナだけでなくエボラ出血熱(致死率はコロナよりはるかに高い)が蔓延し、ギニアでは物流や人流が滞っているのです。その結果、世界食糧計画によれば、41万人以上が食糧不足に直面していて、これは全世帯の21%に相当します。

 

社会・経済的な危機はただでさえ政府への批判や不満を高めるのですが、ギニアではこれが怒りに変わったのです😠危機の最中でもコンデ大統領は自分の権力を維持することに頭がいっぱいだったからです。

 

今回のクーデターで失脚したコンデは、もともと民主派として台頭しました。1958年の独立以来、一党制や軍事政権によって統治されたギニアで、2010年に初めて行われた民主的選挙でコンデは当選したのです。

 

しかし、アフリカでは「政治家が民主的なのは権力を握るまで」というパターンが珍しくありません。コンデも2020年、「大統領の任期は2期まで」という憲法の規定を強引に変更したうえで、3期目を目指して大統領選に立候補し、勝利したのです。

 

この勝利は反対派の抗議デモを力ずくで鎮圧し、数十人の死者を出しながらのものでした。コンデは国内の和解と融和を強調しましたが、その就任式は自分の権力を永続化させようとするセレモニーに過ぎなかったのです😠

 

国難ともいえる状況で、高齢の「独裁者」が権力の座にしがみつけば、多くの国民から失望されるのは当然のこと。選挙で不正がまかり通り、平和的に政府を交代できないなら、なおさらです。

 

そのため、今回のクーデターに肯定的な見解は、ギニアの一般市民だけでなく、他のアフリカの国の専門家の間にもあるのです。セネガル出身の政治学者イビラヒム・ケイン博士は、そもそもコンデ3選に疑問の余地が大きかっただけでなく、イエスマンに囲まれた高齢のコンデ大統領が現実とかけ離れた判断しかできなかったと指摘しています。

 

ちなみに、こうしたコンデ政権と癒着した国の筆頭が、ギニア産ボーキサイトの37%以上を輸入する中国でした。だとすれば、先程のように中国政府が「内政不干渉」の原則を放り出してまで、今回のクーデターを批判しているのは、いわば当然の成り行きです。

 

こうしてみた時、一般的にネガティブなイメージで語られやすいクーデターに、ギニアで「腐敗して無能な政府を倒す最後の手段」というポジティブな意味が見出されやすいのは不思議ではありません。そして、これはギニアに限った話ではないのです。

 

経済の停滞、貧困の蔓延、食糧不足などへの危機感、そして危機に対応できない(しない)政府への不満、形式に過ぎない選挙への幻滅といった条件は、アフリカ各地で充満しています。そうした国ではギニアと同じく、多くの人に「国家のためのクーデター」を期待させやすくなってしまうのです。

 

民主主義が万能でないのと同じく、軍事政権にも絶対は存在しません・・・

 

古来、軍事力で権力を握った者の多くは最終的に権力に溺れてしまい、自分たちが倒した「独裁者」と同様の、あるいはそれ以上の「独裁者」になることも珍しくありません。

 

ミイラとりがミイラになる連鎖だけが続いてしまえば、経済停滞や食糧不足といった危機はさらに加速していきます。

 

アフリカは今、さらなる混迷の淵へと足を踏み入れているのかもしれません・・・

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