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情報

なぜ日本ではキャッシュレス決済が広がらないのか?

日本のキャッシュレス決済比率が低いことは、よく知られています。経済産業省の商務・サービスグループキャッシュレス推進室の資料(2021年8月)によれば、キャッシュレス決済比率は、韓国では94.7%にもなっています。それに対して、日本は約30%にとどまっているのです。

 

キャッシュレス推進室は、キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度に引上げ、将来は世界最高水準の80%を目指すとしています。日本経済の生産性を高めるために、キャッシュレス化は必要なことだといえます。また、新型コロナウイルスの時代には、人と人との接触を減らす観点からも、キャッシュレス化が望まれます。

 

キャッシュレス促進のため、政府は2019年10月から20年6月中まで、消費税増税にあわせたポイント還元策を実施しました。決済業者が手数料を3.25%以下に抑えれば手数料の3分の1を補助し、さらに2~5%のポイント還元分を国が補助する制度です。

 

しかし、この政策の効果はどうだったのでしょうか? むしろ、新型コロナの感染拡大による影響のほうが大きかったといえます。

 

『日本経済新聞』の調査によれば、2020年2月10日~3月8日と、5月4日~17日のデータを比べると、最も利用が多かった決済手段はクレジットカードで、全体の36.2%を占めました。この期間に1.9ポイント増えたのです。現金は、2.8ポイント減の31.7%でした。

 

それに対して、「ペイペイ」や「LINEペイ」などQRコードを用いるスマートフォン決済のシェアは、0.1ポイント減の7.4%に留まったのです。

 

対面決済が減っているため、伸びなかったのです。「Suica」など電子マネーの利用額のシェアは、0.8ポイント増の18.4%となり、タッチするだけで支払えるため、QRコードの決済などと比べると堅調でした。

 

電子マネーについて日本の場合の基本的な問題は、おそらく手数料が高いことにあると思います😢。

 

経産省が平成29年に公表した調査でも、店舗がキャッシュレスを導入しない理由として、「手数料の高さ」が最多だったのです。

 

とくに高いのがクレジットカードです。各社はそもそも加盟店手数料を開示していませんでしたが、実態は最大7%程度の場合もあったのです。

 

法人企業統計調査によると、売上高・営業利益率(売上高に対する営業利益の比率)は、全産業で4.26%です(2020年1~3月期)。小売業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業ではさらに低く、2.5%程度でしかありません。カード決済の手数料が7%では、大幅な赤字になってしまいます。

 

カードの手数料は、なぜこのように高いのでしょうか?

 

欧米では銀行がクレジットカードを発行しているのに対し、日本では、カード会社が銀行に振り込み手数料などを払いながら事業を手がけているのが一般的だからだ、といわれています。

 

また、日本では利用額の一定割合を利用者に還元し、その原資を手数料で賄うため、手数料が高くなっているのだともいわれるのです。

 

さらには、ネットワーク回線の通信料があります。

消費者の決済情報を専用回線でやりとりしますが、回線使用料は金額ではなく、回数によって決まります。ところが、還元期間中は1000円未満の「小口多頻度決済」が過半数を占めたため、決済回数が多くなり、回線使用料が増えたのだとされています。

 

ペイペイなどスマートフォンを使ったQRコード決済の場合は、ポイント還元期間中は、手数料を条件付きで無料に抑えました。中国でアリペイなどの電子マネーの利用が進んだのは、手数料がゼロだからなのです。また、仮想通貨の場合も手数料はゼロに近くなります。日本でキャッシュレスが進まないのは、電子マネーの手数料が高すぎるからなのです。

 

日本でキャッシュレスが進展しないもう1つの理由として、さまざまな電子マネーが乱立していて使いにくいことがあげられます。

 

複数の電子マネーを統合する仕組みは、すでに存在しています。それは、「UPI(統合決済インターフェース)」という仕組みです。日本でもすでに利用可能になっているグーグルペイは、UPIを用いているアプリです。

 

グーグルペイは、楽天EdyやSuicaなどと同列の電子マネーの1つではなく、これらの電子マネーを使いやすくするための仕組みです。

 

日本でグーグルペイのアプリをダウンロードすると、楽天Edy、nanaco、WAON、Suica、QUICペイなどが使えます。

 

多くの電子マネーは、その電子マネーの口座に入金した残高がないと使えません。しかしグーグルペイの仕組みを使えば、クレジットカードから簡単に入金できます。どのクレジットカードを使えるかは電子マネーによって違いますが、楽天Edy、Suicaなら、日本で発行されているほとんどのカードが使えます。

 

しかも、支払いには、スマートフォンをかざすだけでいいのです。共通のQRコードができたのと同じ効果が得られます。

 

UPIは、グーグルが開発したものではなく、インド決済公社が開発した仕組みです。

インド政府は高額紙幣を廃止する一方で、UPIのシステムを開発したのです。サ-ビスは2016年4月に始まりました。

 

その特徴は、異なる銀行口座からの利用を可能にしている点です。そのため、UPIの仕組みを使うと、スマートフォンだけで複数の電子マネーを使うことができます。

 

現在インドには、45もの電子マネーが存在しますが、これらがバラバラにならず、連携して使うことができます。協議会を作ったり、統一QRコードを作るのもいいのですが、UPIの活用も、もっと考えられるべき課題なのかもしれません。

 

新しい決済手段に関するMUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)の取り組みが最初に報道されたのは、2016年のことでした。

 

同年2月1日の『朝日新聞』が、MUFGが独自の仮想通貨「MUFGコインを開発中」と1面トップで報道しました。これは、ブロックチェーン技術を用いる通貨で、2017年に発行予定とされていました。

 

銀行自らが取引所を開設し、同行に口座を持たない人も利用できます。送金や買い物の支払いにも使え、手数料はゼロに近い水準まで下げられるというので、マネーの世界に革命的な変化をもたらすものとして実用化が待たれていました。

 

MUFG社内での実証実験が2018年から進められ、2019年度中に発行の予定とされていました。しかし、2019年末に方向転換があったようなのです。

 

MUFGは、2019年12月にリクルートホールディングスと共同で新会社の設立契約を締結しました。『日本経済新聞』の報道によれば、MUFGはデジタル通貨「coin」(通称MUFGコイン)を当初は2017年度にも実用化する計画でしたが、利用者の本人確認の徹底など銀行法が求める要件と利便性を両立できないという問題があったのです。

 

このため、単独での展開は難しいとみて戦略を転換したのだといいます。この記事は、「将来はブロックチェーン(分散型台帳)を使って大量の決済情報を高速でやりとりする仕組みにする計画」としています。逆に言えば、「coin」はブロックチェーンを用いないもの、つまり数多くあるQRコード決済の電子マネーと同じものだということになります。

 

これは、大変大きな方向転換です。銀行法との折り合いが難しいというのはそのとおりでしょう。

 

しかし、それだけでは、利用先をリクルートに限定する理由は、依然として分かりません。

そこで、他のメガバンクによるデジタル通貨発行計画を見れば、みずほの「Jコイン」も伸び悩み、みずほフィナンシャルグループは「Jコイン」という名称のデジタル通貨を提供する方針を明らかにしていました。

 

しかし、2019年3月に始まったのは、QRコードを使ったスマートフォン決済サービスである「Jコインペイ」でした。

参画する地方銀行などが、実際の運用を行い、銀行口座からアプリにチャージする場合や、アプリ内のJコインペイの残高を銀行口座に戻して現金化する場合には、手数料は無料です。Jコインペイに参画している銀行であれば、異なる銀行間でも手数料無料で送金できます。この点では、他のQRコード決済の電子マネーより有利なので、利用者が増えるだろうとの期待があったのです。

 

しかし、実際には、顕著には増えることはありませんでした。それはなぜなのでしょう?

 

それは、手数料が高いからだと思われるのです。ここで「手数料」というのは、消費者が利用する場合の手数料(銀行口座との間の出し入れや送金手数料)ではなくて、店舗が電子マネー提供事業者に支払う手数料のことです。加盟店手数料は非開示です。

 

Jコインペイの公式サイトには、次のように記されています。

「導入費用は0円。加盟店料率(決済手数料)は各取扱金融機関により異なる」

加盟店手数料については、高知市が2019年7月に開催した「キャッシュレス対応フェア」の際に公表した資料がウエブにある。

 

それによれば、Jコインペイの加盟店手数料は、売り上げの1.5~3.0%となっています。これはかなり高い手数料といえます。

Jコインペイは「3~5%程度とされるクレジットカードより低くする」と約束していて、それは実現されているのですが、それでも高いのです。

 

2019年10月1日~2020年6月30日までの期間には、他の電子マネーが手数料を2.16%または2.17%としていました。これは国の補助があったからです。この影響もあってJコインペイは伸び悩んだのかもしれません。

 

184加盟店は、Jコインペイに参加する金融機関が自らの営業エリアの取引先を中心に開拓します。みずほというメガバンクが自ら加盟店舗獲得をするのは難しいからでしょう。

 

なお、Jコインペイと同じようなサービスである「銀行ペイ」が2016年に開発され、横浜銀行の「はまペイ」、福岡銀行、十八親和銀行、熊本銀行の「YOKA!ペイ」、沖縄銀行の「OKIペイ」などが参加しました。そして、2019年5月からは、ゆうちょ銀行の「ゆうちょペイ」が始まりました。

 

まさに乱立としかいいようがない状態になっています。利用者の立場からすれば、どれを導入してよいのか、見当がつきません😓。

 

マイナス金利で収益が悪化する銀行にとって、QRコード決済による手数料収入は、新たな収益源です。そこで、銀行としては、何とかしてこの事業を成立させたいのです。しかし、加盟店開拓は容易なことではありません。

 

店舗が集まらない基本的な理由は、手数料が高すぎることでしょう。2~3%の手数料というのは、現在のATM利用の手数料と同レベルです。

日本の小売業の売上高営業利益率は3%程度です。さまざまな経費をかけてやっとこれだけの利益を出したのに、電子マネーの店舗手数料でそのすべてを巻き上げられてしまうのでは、店舗が使うはずはないでしょう。

 

Suicaなどの交通系電子マネーの店舗手数料も高いですが、駅内店舗の場合には導入せざるを得ない事情があるのでしょう。また、nanacoなどのコンビニエンスストア系の電子マネーは、ポイントと結びついています。

しかし、これら以外は無理です。Jコインペイが伸び悩む基本的な理由は、この点にあるのかもしれません。

 

MUFGのcoinも同じ問題に直面しているのではないかと考えられます。つまり、Jコインペイと同じようなレベルの手数料を設定しており、このため、店舗が集まらないのです。そこで、リクルートのサイトで始めるようにしたのではないか? こう考えれば、利用先をリクルートに限定した理由がおのずと分かります。

 

しかし、ブロックチェーンを用いるデジタル通貨であれば、コストはずっと低くできます。そのため、手数料をゼロに近くすることができます。手数料ゼロなら、加入店を開拓するために努力する必要はありません。逆に言えば、メガバンクが手数料収入を当てにデジタル通貨サービスを始めようとするのは、間違いなのです。

 

「日本人はキャッシュ志向が強いためにキャッシュレスが進展しない」といわれます。しかし、コロナ期においては、現金を介しての感染の危険があるため、日本でもキャッシュレス化への需要は高まりました。

 

それにもかかわらず手数料が高いために、店舗が利用しようとしないのです。日本でキャッシュレス化が進まない大きな原因は、ここにあるのかもしれません・・・。

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