「そして男は時計を捨てた・・・」にようこそ!

 

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書籍

『小公女』のセーラにあってシンデレラにはないもの

バーネット『 小公女』(1905年)の原題は「A Little Princess(小さなお姫さま)」。ロンドンの寄宿学校を舞台にした波瀾万丈の物語です。しかし、この物語は単なるお姫さま物語ではないかもしれません。それは主人公セーラの意外な性格に隠されています。昔ながらのおとぎ話と、どこが違うのでしょうか?

 

物語は、暗い冬の日のロンドンからはじまります。どんよりとした霧が立ちこめる中、いっぷう変わった雰囲気の少女が父親と辻馬車に乗っています。

 

この少女が主人公のセーラ・クルー、当年とって7歳です。この子はイギリスの植民地であるインドで生まれました。母はフランス人ですが、娘が生まれてすぐに亡くなり、セーラは父と2人、召使いが大勢いる豪邸で暮らしてきました。

 

植民地育ちの子は大英帝国の正しい紳士淑女に仕立てるべく、一定の年齢になると本国の学校に入れられるケースが多く、セーラがロンドンに来たのも寄宿学校に入るためでした。しかし彼女は、親元を離れて学校に入ることを望んでいませんでした。インド育ちの彼女にとって、気候も風土も異なるイギリスは「異国」です。そして何より父親と離れたくはないのです。

 

その父親ですが、この人はなかなかに問題のある男性だったのです・・・

 

「クルー大尉」と呼ばれているように、彼はインドに駐留する英国の軍人です。と同時に、親の資産を受け継いだのか?副業に励んだのか?大変な大金持ちです。

 

しかも・・・娘に死ぬほど甘かった・・・😅

 

セーラがほめたものは何でも買ってあげたいし、自分が気に入ったものもまた何でも持たせたい!7歳の娘の入学準備のためにロンドンの店で買い求めたのは、高価な毛皮の飾りがついたベルベットのドレス、レース地のドレス、刺繍をほどこしたドレス、柔らかで大きな駝鳥の羽根を飾った帽子、白テンのコートとマフ、小さな手袋やハンカチや絹の靴下が何箱も・・・

 

貴族の嫁入り道具じゃあるまいし、完全にどうかしているんじゃないのか・・・😅

 

では、当のセーラはどんな子だったのか?

第一にこの子は天才的な頭脳の持ち主だったのです。7歳児とは思えないほど語学の才に長けているのです😱英語はもちろん、フランス語もドイツ語もお手のもの。しかも彼女は本の虫で、歴史、伝記、詩、何でもかんでも読みまくっている。スゴい😊

 

第二にセーラは7歳児とは思えないほど分別くさい子です。父が「小さな奥さま」と呼んでいるくらいで、異様に大人びて、ものおじしないところがあるのです。

 

第三に彼女はたいへんな正義感の持ち主です。誰かがいやな目にあっているのを見ると、その場に飛びこんでいきたくなるのです。もしセーラが男で、それも何世紀か前に生まれていたら、抜き身の剣を手に、国じゅう飛び回っていたかもしれない!と父のクルー大尉は自慢げに言うのです😅

 

これはもうお姫さまというよりは騎士、男の子に求められる資質です。

本国から離れた土地で育ったこと、女性のロールモデルである母を早くに失ったことで、女子のジェンダー規範から、おそらく彼女は自由だったのかもしれません。クルー大尉に褒めるべき点があるとしたら、そんな娘の「男らしい」資質を抑圧しなかったことにあります。

 

さらにつけ加えておくと、セーラは度を越した空想好きです。ロンドンで父に買ってもらった人形のエミリーを彼女は親友と思っています。そこだけは「女の子らしい」感じがしますが、この「親友」を手に入れるために父娘がロンドン中を駆けまわり、人形に洋服まであつらえたことを考えると、やっぱりどうかしているのかも・・・

 

ともあれクルー大尉は、娘が望むものは何でも与えてやってくれといい残してインドに発ちます。寄付金もはずんだかもしれません。セーラは「特別寄宿生」として学校に迎えられます。彼女に与えられたのは、専用の居間のついたベッドルーム、ポニーと馬車、インドで身の回りの世話をしていた乳母に代わるメイド・・・これは破格の待遇です。

 

イギリスで義務教育制度が整うのはもう少し後のことです。セーラが入学した「セレクト女子寄宿学園」は、個人経営の私塾みたいなものでした。ここでは幼稚園児にあたる4歳児から、中学3年生にあたる15歳までの少女が共同生活をしています。

 

女子の寄宿学校とは、例えるなら「プチ大奥」みたいなものです。当然そこには権力争いがあります。セーラも好奇の的になりますが、まもなく彼女は学園内の弱者たちの心をつかむことで、学園のスターになっていきます。

 

空想好きのセーラの武器は、お話を創作して語る能力でした。妖精や貴婦人や人魚のお話。本で学んだ文学的な教養なしに妖精や貴婦人や人魚のお話は作ることはできません。芸は身を助くというべきかも。無類の読書好きだったことが、彼女をスターにしたのでした。

 

そして2年がたち、9歳になったセーラはひとりの不遇な少女を発見します。重い石炭箱を運び、暖炉に火を入れながら、おずおずとセーラのお話に聞き耳を立てている少女を。名前はベッキー。学園に雇われている「洗い場女中」でした。

 

その日セーラが部屋に戻ると、ベッキーが安楽椅子で眠りこんでいました。〈あちし、そんな、つもりじゃ、なかったんです、おじょうさま〉。あわてるベッキーをセーラは怖がらなくていいのよとなだめ、ケーキをすすめて、毎日仕事が終わったらここで会おうと誘います。そしたら、お話を最後までしてあげるから、と。

 

いつでも誰に対しても「上から目線」で接してしまうセーラ👑

「プリンセス」というあだ名がついたのも、そのせいでした。

 

〈あの子、今、王女のつもりなんだって。で、ずっとそうしてるんだって〉と、セーラが来るまで学園を仕切っていたラビニアはいいます。

〈あの子なら、乞食になったって王女のつもりでいるかもね〉 〈そうだ、あの子のこと、『王女様』って呼ぶことにしましょうよ〉

『小公女(リトル・プリンセス)』というタイトルは皮肉をこめて級友がつけたあだ名に由来するのです。意地悪なニュアンスをくみとれば「姫」でしょう。

 

しかし、そんな彼女にもついに大きな試練が訪れます・・・

それは彼女の11歳の誕生日でした。盛大な誕生パーティーの最中に、インドにいる父のクルー大尉がマラリアで急死したこと、しかもダイヤモンド鉱山の事業に失敗し、無一文になっていたことが知らされます。しかし、プリンセスのように毅然とした態度でいようと誓っていたセーラは騒ぎも泣きもしなかったのです。

 

〈気取った態度をとるのはやめなさい〉とミンチン先生は命じます。〈そういう時代はもう終わったのです。あなたはもう王女じゃないの〉。〈あなたはベッキーと同じなの。食いぶちのために働いてもらわないことにはね〉

 

クルー大尉のバカバカしいまでの金持ちぶりも、娘に対する気持ち悪いほどの甘やかし方も、そしてセーラの鼻持ちならなさも、すべてこの瞬間のために用意された仕掛けだったのかもしれません。

 

後見人を失った子どもには何の価値もないことを。学校においてさえ持てる者と持たざる者の差は歴然としていることを上の事実は物語っているのです。

 

過酷な現実をしかし、彼女は持ち前の想像力で乗り切ろうとするのです。

〈私は、バスチーユの囚人なの。何年も何年も何年も、ここに閉じ込められるの〉

〈ミンチン先生は牢屋番よ〉。そして〈ベッキーは隣の牢の囚人なんだわ!〉。

 

『小公女』は『シンデレラ』のバージョンアップ版です。

おとぎ話の『シンデレラ』は屋根裏部屋の下女だった少女が急上昇して幸福をつかむ物語でした。『小公女』はお嬢様だった少女が下女に急下降する物語です。

 

『シンデレラ』と『小公女』、おとぎ話と少女小説のちがいとは何でしょうか?

 

それはきっと魔法使いが出てくるか?出てこないか?

 

シンデレラがかぼちゃの馬車で舞踏会に行けたのは、超自然的な魔法使いの力ゆえのこと。またシンデレラが幸福をつかんだのは、彼女の美貌に王子が一目惚れしたからです。『シンデレラ』といい『白雪姫』といい『眠り姫』といい、おとぎ話の王子というものは、親の威光で食ってるくせに女を容姿で判断するような男ばかりです。

 

ひるがえって『小公女』はどうでしょう。11歳にして人生のどん底に落ちたセーラは、ここから再び幸福への道を上りはじめます。『小公女』はV字回復型の物語なのです。

 

一度目の幸福、すなわち彼女が金持ちの娘に生まれたのはたんなる偶然です。しかし、二度目の幸福は、彼女が自力でつかんだものだったのです。

 

王子に見そめられて結婚するという超絶に古くさいお姫様の物語を、きっと『小公女』は近代の物語に作りかえたのかもしれません👍


リトル プリンセス 小公女セーラ (講談社青い鳥文庫) [ フランセス.ホジソン・バーネット ]

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